ウイルスは届くよ、どこまでも。
(たぶん)みんなが見飽きたこの画像

こんにちは。ちょっと怒っているいしざき(@zaki84920)です。

いや、ちょっとじゃないですね。けっこう怒ってます(怒)

 

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「怖いですよねぇ〜」??

先生!

 

“みなさん、走る時にマスク、してますか?

近所の公園を走っていると、マスクしていない人、多いですよね〜。

外を走るわけですから密室ではないものの、近づいたりすると「密接」という条件に当てはまってしまいます。ちょっと気をつけていただきたいですね。

それで、走る時に呼吸の飛沫が、その中にもしウイルスが入っていた場合、どのくらい飛んでいってしまうのか、こういう絵がありますので、ご覧ください。

 

どーーーーん!!

 

「どうですか?怖いですよねぇ〜。」

 

けっこう思ったよりも遠くに飛んでいってしまう。特に、後ろに走ってる人がいた場合、その人に飛んでいってしまいますので、マスクは絶対、つけて走ってください。”

 

おいw ちょっとまてw

この話が一体どこの誰から出てきたの話だったか、、もう怒りを通り越してしまい全然覚えていないのですが()、確かどっかの有名なランニング○ーチの方だったか、どうだったか。

どこから突っ込んだら良いのか分からないぐらい、おかしな話なんですわ。。

 

ウイルスは届くよ、どこまでも。

みなさん、ご存知だと思いますが、ウイルスは肉眼では見えないものの、顕微鏡などで拡大すれば観察することのできる「物質」です。

愛、自由、希望、夢、、といった概念的なものではなく、実際に存在している「モノ」です。

 

浮いてるモノなんだから、
そりゃ飛んでいくに決まってるだろうがww

 

って思うわけですよ。もうね、さすがに口も悪くなりますよ。

だって物だよ。物質だよ。そりゃ軽けりゃ風に乗って飛んでいきますよ。

 

「ランナーが吐き出すウイルスが10mも飛んでいく!だからランナーは危ない!」って、ア〇丸出しやないか。普通の歩行者が吐き出したウイルスだって風に乗れば100mでも1kmでも飛んでいくんだわ。マスクしてたって隙間から飛び出したウイルスがいれば何メートルでも飛んでいくんだわ。

(おっと、口が悪くなりすぎた。失礼失礼・・)

 

飛沫が飛んでいくこと=感染リスク ではない

飛沫感染を考える上で大事なことは、以下の2つです。

 

  1. ウイルスが “生きたまま” 届くかどうか
  2. ウイルスが到達する個数

 

1については、ウイルスの活性・不活性などに詳しくなくても、空気中を漂う中である程度の時間や距離でその効力を失っていくであろうことは、何となく想像できます。

(この話、新型コロナに関しての明確な根拠が出揃っているわけではありませんが、もし「距離により効力を失わないウイルス」なんだったら、今頃日本も世界ももっと大変なことになっています。いくら入国制限をしても黄砂のように風に乗って中国から入ってくることになりますので・・「距離により効力を失う」は、推察としては正しいと考えて良いでしょう)

(「生きたまま」と表現しましたが、ウイルスに生死があるのか、という議論もあるようなので、ここは便宜上の表現として受け入れてください。)

 

2については、完全に理科の問題ですね。ざっくり言うと「攪拌」の話です。

例えば、

『問題。10cm2程度の排出口から10万粒の粒子が空気中に放出されました。2m先の壁に届いた時、壁10cm2あたり何粒付着するでしょうか?』

この質問に「10万粒!」って答える人、いないですよね?

 

普通に想像すれば分かります。具体的に何粒になるのかは、流体力学?等で計算しなければ特定できませんが、

距離に応じて当たる可能性は減っていく

ということは私たち素人にでも理解できる話です。

 

で、気になるのは

「どのくらいの距離が開けば、ウイルスの効力が失われるのか?」

「どのくらいの距離が開けば、問題のないウイルス数におさまるのか?」

という疑問なのですが、これだけは専門家にしか分かりません。

(おそらく今の段階では、効力や個数については専門家でも断定的なことは言えないでしょう。ただ一般的に、ウイルス1粒を吸い込んだだけで感染症を発症することはなく、数万〜数十万という単位でなければ感染症を発症することはない、というのが通説です。もちろん、新型コロナがそれに該当するかどうかは、まだ明確でないと思いますが「ある程度の数がなければ発症しない」と考えることは間違いでないでしょう。)

(距離に関しては、多くの専門家が「ソーシャルディスタンス=2m」という目安を提示しています。新型コロナにおいてどの程度の適合性があるのかは分かりませんが、感染拡大状況などから推察するに、概ね間違った距離ではなさそうですね。)

 

そもそも「あの画像」だけで騒ぐことが非論理的

もう「あの画像」でいいや

 

冒頭の「あの画像」のコメントには、感染症に関する知識云々の前に論理性がありません。

 

その1:あの画像は「マスクがない状態」の飛沫拡散度合いを示しているが、そもそも「マスクをした状態」の画像はない。つまり、そもそもマスクによってあの拡散が止められるというデータなしに、マスクを着用しろと叫んでいる。(“絶対に” とまで言っちゃってる。まったくもう。。)

その2:あの画像は「ランナー」の飛沫拡散度合いを示しているが、そもそも「ランナーの以外の存在(例えば歩行者)」の画像はない。つまり、ランナー以外はどの程度飛沫を拡散しているかというデータなしに、ランナーにだけ注意喚起をしている。

 

もう、ぐちゃぐちゃです。

井戸端会議と同レベル・・なんて言ったら井戸端会議に失礼なぐらいです。

 

そんなに、ランナーを悪者にしたいのですか?

 

論理的思考を阻む「図解」の罠

論理性論理性、と口うるさく言っている僕ですが、人間がついつい、論理性を忘れてしまう場面があるという落とし穴のことは、よーーく理解しているつもりです。

その罠が「図解」によるものです。

 

ここで、下の説明をお読みください。

 

『これはA社から購入したハンドソープなのですが、このハンドソープで丁寧に手を洗った後、手に残った雑菌の数を調べたら1200個もの雑菌が残っていました。』

 

▼つまり、こういうこと。

 

ぼく
どうですか?怖いですよねぇ〜

 

 

・・・。

 

手を洗う前に存在する雑菌数が示されていませんから、そもそも上記の説明文は「情報不十分=判断ができない」と読むのが正しいです。

 

で、結論はというと、多くの方がお察しのように、ぜんぜん怖くないです。

一般に、人間の手のひらには10万を超える数の雑菌がいると言われています。手を洗って残された雑菌が1,200ということは、約99%殺菌できているということ。普通に、ちゃんと殺菌できているレベルと言って良いでしょう。

(以上、いしざき調べ。手のひらの雑菌数は1cm2あたり1,000弱とのデータがありました。また殺菌力を持つ洗剤は菌の数を2桁減少させるものが多く販売されているとのデータより。もしかしたら違う実験結果があるかもしれませんが。専門外なのでご容赦ください。)

 

そして極め付けは「粒の大きさ」です。

どんな図解でも同じことですが、人間の目に見えないものを、目に見えるように表現してるんですから、、

 

そりゃ大きめに書きますよ!!
同じ大きさで書かれたら、見えないじゃんww

 

なんなら、この手のひらの画像だって、1,200もの雑菌があるのに、雑菌のイラストは25個しか書いてないんだから、むしろ綺麗に見せてる方だと思いますけどね!笑

(1,200個バージョンの絵を作ろうとしたけど疲れるのでやめます。笑)

 

ここまでの話で、「あの画像」が感染予防のための知識としては何の役にも立たないことがご理解いただけたと思います。

 

まだ、言いたいことは山ほどありますが、、ここまで分かっていただけたら、僕は十分です。

みんな、ありがとう。

 

さいごに

「コロナ禍」の最中、ランニング業界を引っ張っていく存在である有名コーチの方々が、なんとかして自分たちの力で情報を発信しなくては!と考え、自分なりの情報を発信しようと努力をされた姿勢、その“姿勢”そのものを否定するつもりはありません。

ただ、今回は問題が複雑すぎました。新しいウイルスの対策は、そんな「素人がちょっと聞いた話」だけで何かを断定できるほど、シンプルな問題ではないのです。

 

僕は決して、論理性の重箱の隅を突くようなことがしたいわけではありません。

ランニング時のエチケットを大切にすること、それを著名人の方々が呼びかけてくださることは、すごく大事なことです。

ただ、その内容も一歩間違えれば、パンデミックがおさまった後にもランナーとそれ以外との溝を深めてしまうことにならないか?と心配をしています。ランナーだけがウイルスを撒き散らし、ランナーだけが感染源であるかのような表現を、わざわざ選ばなくても良いでしょう。

また、「マスクをすることが必ず感染予防になる」という(正しいとは言い切れない)情報をもとに、マスクさえしていれば大丈夫、という誤解を招くことは、逆に感染拡大の一助となってしまう可能性があります。

 

こういう難しい局面では、それぞれのランナーが「自分で考えて行動する」という“主体性”こそ、訴えていくべきことだったのではないでしょうか。

 

・・・

 

この問題において、ランニング界の著名人の方々(の一部)が犯した最大の失敗は、自分たちの想像と感覚で“直接”ランナーに呼び掛けてしまったことでしょう。

「自分たちは感染症対策の素人である」としっかり認識できていれば、感染症対策の専門家やリスク対策の専門家などとタッグを組み、もう少し精度の高い情報を発信することができたはず。

 

「簡単そうに見えるけど、実は複雑で、奥が深い。」

 

ランニングを愛する僕らは、走ることが好きではないと言う周りの方々に、同じことを何度、説明してきたでしょうか。

 

簡単そうに見えるランニングの奥深さ・素晴らしさを、これだけ広めてくれた先駆者の方々だっただけに、今回のマスクラン騒動は、本当に残念な発言の数々でした。

 

おしまい。

 

※冒頭の画像出典はこちらの論文です。私が英語が読めませんが、多くの方がこの実験結果はウイルス感染リスクを実証したものではないと解説をしてくださっています。

 

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