こんにちは。サイラー初チャレンジャーのいしざき(@zaki84920)です。
ロングトレイルは過去にハセツネのみ。。(ハセツネはロングではない、というご指摘もあります・・)
正直「どこまで行けるか?」的なチャレンジとなったわけですが、やはりそう簡単に完走はさせてもらえず、DNFとなりました。
「チャレンジすることが素晴らしいこと。」
多くの方に、こんな温かい言葉をかけていただき、ホッとしたやら、でも情けないやら。
厳しいはずのレースに対して「甘い考えだった」と認めざるを得ないところが、次々と浮かんでくるような、レース後のもどかしい日々を過ごし、ようやく気持ちが落ち着いてきました。
ここに僕の挑戦の記録を、できるだけ正直に、残しておきたいと思います。
彩の国100mile初チャレンジの結果
第8エイド(竹寺)DNF 距離79.4km(17時間ちょうど)
▼エイドまでの通過記録
朝7時のスタート時点では、涼しい中で走ることが出来ていましたが、第1エイド(飯盛峠)に到着する頃には強い日差しに見舞われました。
実際走ったトレイルも日陰が多く、涼しいと思って走っていましたが、そんな中でも徐々に暑さにやられてしまった印象。
1周目(51km・累積3045m)の区間は、あまり急激な昇り下りはなく、だらだらと林道やロードを走る区間が多かったように思います。
スタートして、飯盛峠までは一気に標高が上がるように見える図ですが、距離でいうと約8kmで700mの上昇ですから「だらだらと林道を登っている」という程度。
その後もトレイルとロードを細かく繋ぎながら進み、終始だらだらとしたアップダウンを走っていました。
僕のレースとしては、序盤から「ペースを気にせずのんびり行く。上り坂は頑張らない。」という作戦で進行。
ゆっくりだし、日陰が多いし、きっと大丈夫だろう等と考えていましたが、第4エイド(くぬぎむら・39.7km)の手前あたりで、軽い熱中症の症状(頭痛と吐き気、いずれも軽いもの)が出ていることに気づく。
「でも、このくらいのアップダウンが続くだけなら、無理せず進めば、なんとかなるかな・・」
そう思っていました。
それが、大きな間違いだとも気づかずに。
第4エイドで素敵な出会い
第4エイド(くぬぎ村)での休憩は約12分。
日陰に腰掛けて、おいなりさん半分と、ポテトサラダをいただく。
各エイド、本当に充実していて、だんだんと「次のエイドで食べるために頑張ろう!」みたいなモチベーションになってきていました。笑
ここでいただいたポテトサラダは本当に美味しく、体調さえ良ければもっと沢山食べたかった。
全てのエイドの食事が、そう思わせてくれるほど、すばらしいクオリティでした。
水を飲みながら、熱中症からの回復を待っていると、
僕に声をかける一人の男性が。
「ザキさんですか?」
Twitterのつながりで出会った方に、リアルな場で声をかけられたのは初めてでした。
奇跡のご対面!ふぁいとー!! pic.twitter.com/Qez4ll2NkZ
— いず@信越五岳110k (@motizm_run) May 11, 2019
美味しい食事と、素敵な出会いに元気をもらい、第4エイドを出発。
結局、熱中症の症状は出たり治ったりを続け、
スタートから約9時間で、スタート地点&第5エイドのニューサンピアに戻ってきました。
暑い日のロングレースで「熱中症」というオーソドックスすぎるトラブル。
その詳細を書いてもあまり面白くないと思うので(笑)、そのあたりは割愛。
ただ、ここからは熱中症だけでなく、想像をはるかに超えるコースの厳しさに圧倒されることとなりました。
厳しい厳しい2周目へ。
高低差図だけを比較すると、1周目(North)と2周目以降(South)の激しさは大して変わらないように見えてしまいますが、実際にはSouthの方が断然厳しいコースです。
Northにはない急登が随所に見られる、といいますか、この高低差図に現れていない(!?)ちょっとしたアップダウンが多く、随所で心を折られます。
しかし、100mileを見据えて温存していた僕の脚は、けっこう元気でした。
第6エイド(桂木観音)を過ぎてからのトレイル、結構厳しい上り坂もリズムを維持して進むことができたし、急な下り坂もスタスタと下ることができました。
2周目の出発までに9時間半を要したこともあり、何となく「時間内完走が危うくなりつつある」ことが分かっていただけに、ここでしっかり走れている自分に安堵して、
「良かった。これで少し、制限時間まで余裕を作れたんじゃないか?」
そんなことを、思っていました。
第7エイド、吾那神社に着くまでは。。
遅過ぎた、関門との戦い
162kmを35時間、といいますと、平均ペースが13分/kmかかるとアウトです。
第6から第7までの距離は10.6km。しかも第7の方が標高的に下にあるため、何とか平均ペース(2時間20分ぐらい)よりは貯金を作っておきたいところ。
脚は動いているし、何人ものランナーを抜いている。
さすがに平均ペースよりは速く走れてるだろう。
第6エイドを出発して2時間。もうすぐ第7エイドかな?
そんなことを考えながら、走っても走ってもぜんぜん、人の気配がない。
けっこう良いペースで走り続けているのに。
夜になって涼しくなったからなのか、熱中症からくる吐き気も治まり、厳しい上りも下りも、リズムを維持して進んでいる。
第6エイドを出発して2時間20分・・・
2時間30分・・
いっこうに、人の気配がありません。
後になって思えば、ここで心が折れてしまったような気がします。
トレイルの距離や高低差など、コースの難易度を数値化する「指標」はあるけれど、数値にできない山の厳しさがある。
なんか言われたことがあるフレーズだけど、その意味をよく分かっていなかった。
「それが、、コレなのか・・・!?」
第6エイドを出発して2時間40分。
ようやく、第7エイド(吾那神社)に到着。
区間、キロ15分。 ※そういう計算だけは早い(笑)
この数字は、この時の僕には重過ぎたようです。
あわよくば貯金を・・なんて考えて(期待して)いたら、まさかの借金。
ショックとともに、体調がみるみる悪化。
この先、同じように快調に走り続けることは出来そうにない。
少しでも回復させようと、休みながら、レース中初めて、インターネット速報を見る。
108位。平均11分49秒/km。
この数字を飲み込むのに、少し、時間がかかりました。
参加者はおよそ200人。あれだけの人数を抜いて、108位。
完走率が1割とか2割とか言われているレースで、半分より下位に自分が居るという現実。
「あぁ、もう、間に合わないんだな・・」
とても、とても遅過ぎましたが、ようやく自分が立っている位置を理解しました。
第7エイドで提供されていたシチューは、熱中症にとてもよく効く飲み物でした。
暖かくて、塩気があって、そして美味い。
2回もおかわりをさせていただき、20分くらい経ったころ、体調は何とか、歩き出せるようになるまで回復。
一応、次のエイドに向かって、歩き出す。。
この時、何を思って進んでいたのかは、あまりよく覚えていません。
たぶん・・・
こんなに厳しいレースであることを、本当の意味で全く分かっていなかった自分への情けなさ。
仮に事前に分かっていたとしても、完走する実力がそもそも備わっていなかったことに対する情けなさ。
この厳しいレースを走るために、真剣に準備をしてきた他のランナーに対する申し訳なさ。
厳しいレースに真剣に臨むランナーのために、全力で準備をしてくれたスタッフのみなさんに対する申し訳なさ。
自分の弱さ。
自分の無力さ。
第7エイドまでの間に抜いた、見覚えのある背中にたくさん抜かれながら、、
どこが痛いのか分からないぐらい色んなところが痛み、
頭痛なのか吐き気なのか、何が悪いのかも分からないぐらい身体は言うことを聞かず、
平坦な道ですら、時々歩きながら、上りは重い脚をゆっくりゆっくり押していく。。
これ以上、この状態で山を進み続けることが、いかに危険なことか。
それだけは、理解していました。
ゆっくりゆっくり、なんとか、第8エイド(竹寺)までたどり着き、
開口一番に「棄権」を申し出ました。
DNFの悔しさなど微塵もなく、、
無事にたどり着けたことへの安堵感でいっぱいでした。
ここまで、いろんな僕の気持ちの変化を書き綴ってきましたが、はっきり言ってロングトレイルの世界では、当たり前の話、つまりトップ選手たちは、こんな状況を何とかして乗り越え(&事前準備で回避し)、結果を出しているはず。
こんな、普通の体調変化、普通の痛みを「すごいことのように」考えていた自分の未熟さを、
記憶が新しいうちに文章に残しておこうと思い、このような日記を書きました。
僕にとっての「強さ」は、
「すごい」と思っていたことを「普通だ」と思える状態にする作業を続けること
を通じて、得てきたと思います。
(今回そう気づいた)
トラックで5000mばかり走っていた頃、フルマラソンを走るなんて、本当にすごいことだと思っていました。
でも今こうしてフルマラソンを普通に走れる様になって、
「なんだ、フルマラソンなんて大して長くないよ。」
そう思えた頃から、5000mもマラソンも、安定して速く走れるようになった。はず。
このレースを走る前の僕は、トレイルで100マイルを走ることは、すごいことだと思っていました。
そして、どこか「自分なら(そんなすごいレースでも)完走ぐらいはできる」と思っていました。
このレースを完走し、サイラーの称号を勝ち取ることがどれほどすごいのか。
それすら理解できていない「初歩の人」でした。
今ようやく、このレースの「本当のすごさ」を理解して「普通のチャレンジャー」になれました。
でも、たぶん今のまま「このレースやばい」なんて考え続けていたら、きっといつまで経っても完走なんかできない。
足りないものは、気合いを入れて勝ち取るのではなく、
普通に、淡々と積み上げていくフェーズに早く移行しなければならない。
自分がもう何段階も強くならなければ、完走すらさせてもらえないレースに出会えたこと、
いろんな意味で「チャレンジしてみて良かった」と思わせてくれるレースでした。
(来年出るとは言っていない)